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講談社くらしの本

私の好きな原田泰治の絵 心に残る十月の一枚

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私の好きな原田泰治の絵 心に残る十月の一枚

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諏訪市原田泰治美術館の名誉館長でもあるさだまさしさんが、「私の好きな原田泰治の絵」にあげたのは、ハワイ・マウイ島に咲くジャカランダの名木を描いた「ジャカランダの丘」(1990年)。

日本のふる里の風景、自然のなかで慎ましやかに生きる人々の姿を描き続ける原田泰治さん。原田さんと交流のある各界著名人が選んだ「心に残る絵」「記憶に刻まれたとっておきの情景」を集めた著書『私の好きな原田泰治の絵』から、季節に添った今月の一枚をご紹介します。

栗の木揺れる懐かしい思い出

「栗ひろい」 長野県上高井郡小布施町 1983年 380×285㎜

小布施町にはこんもりと茂った栗林があっちこっちにある。わずかな風にカサコソ音をたてる林で、イガを割り、栗ひろいする人を見かけた。そんな光景をながめていると、学校から帰るなり、友だちと一目散に栗ひろいへ行った頃が思い出される。(原田泰治)

『私の好きな原田泰治の絵』p.20-21「栗ひろい」

『私の好きな原田泰治の絵』p.20-21「栗ひろい」

「栗ひろい」を私の好きな原田泰治の絵にあげたのは、『ごんぎつね』などの絵本でも知られるイラストレーターの黒井健さんと、小布施(おぶせ)竹風堂の竹村猛志さん。お二人とも緻密に描かれた栗林の繊細さに感嘆しています。

小布施町は古くから栗の産地として知られ、小布施栗は江戸時代には幕府に献上されていました。今でも町のあちこちにこんもりと茂った栗林があり、栗菓子の店が軒をならべています。

「下草の1本、栗の葉1枚、その繊細なタッチに、あのアトリエに朝早くからこもり、息をつめて没頭している彼の息づかいが伝わってくるような心に残る一枚である」。原田さんのアトリエを知る、竹村さんの言葉です。

画面いっぱいに一面の空を塗り、木と林を描き重ね、下草の1本1本を描きこむ。その上に人物を重ねていく原田さんの手法は、同じ「絵を描く人」としての黒井さんに、「一筆々々に費やされた時間は膨大なものと推測され、気が遠くなります」「原田さんの並外れた根気は、その描かれる情景に寄せる愛おしさと喜びに発するものであることが伝わって来ます」と言わしめます。

エプロン姿の女性の長靴が踏む栗のイガ、栗の実で重みを増す腰のカゴ⋯⋯。見る者にその感触を感じさせ、栗の木が風に揺れる小さな音さえが聞こえてきそうです。そこには黒井さんの言う「描かれる情景に寄せる愛おしさと喜び」があふれています。

林間に、学校から帰るなり友だちと連れ立って栗ひろいに行き、コリコリと音をさせて生で栗をかじる少年時代の原田さんの姿が見えるような気がしませんか?

一日一日、夕暮れも早くなります。                   構成/からだとこころ編集チーム

私の好きな原田泰治の絵

著者 原田泰治

私の好きな原田泰治の絵

著者 原田泰治

日本人の心のふる里を描き続ける原田泰治の作品。 33人の著名人たちが選んだ26作品を、それぞれのエピソードとともに紹介します。
永六輔さんの好きな絵は佃島の下町の音が聞こえそうな「路地」、萩本欣一さんは「木枯らし坂」⋯⋯。「原田さんの絵は心にしっかり届く」と語る建築家の安藤忠雄さんが選んだのは「友禅流し」。
各地の心に残る四季の風景、小さなふる里のひとコマが広がります。

profile

原田 泰治(ハラダ タイジ)

1940年長野県諏訪市に生まれる。1963年武蔵野美術短大卒業。1973年複十字シール・デザイン・コンクール特選。1980年小学館絵画賞受賞。1982年4月から、朝日新聞日曜版に「原田泰治の世界」を127週にわたって連載。1984~86年「原田泰治の世界展」を全国22会場で開催。1987~88年「ナイーフ三人展-原田泰治とユーゴの仲間たち」を各地で開催。1989年から2年にわたりアメリカ合衆国の5都市で「日本の四季を描く原田泰治の世界」を開催。同展覧会は帰国後、全国33会場を巡回。1998年信州諏訪湖畔に「諏訪市原田泰治美術館」開館。1999年紺綬褒章を受章。2001年11月より2002年にかけてブラジル(サンパウロ、リオデジャネイロ)にて「原田泰治の世界展」を開催。2002年中米3ヵ国(メキシコ、コスタリカ、ニカラグア)にて「日本の心」を伝える絵画展・講演会を開催。2008年郵便事業(株)ふるさと切手「ふるさと心の風景」シリーズを全国発売。2011年財団法人逓信協会第56回前島賞受賞。主な著書に『さだおばさん』『原田泰治自選画集』『日本の歌百選』『日本のふる里』など。

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