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北斎の「三役」ってなに?             すみだ北斎美術館で「新収蔵品展」開催

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北斎の「三役」ってなに?             すみだ北斎美術館で「新収蔵品展」開催

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葛飾北斎の代表的な作品「冨嶽三十六景」シリーズ。各地からの富士の姿は、三十六景と言いながら実は46図が刊行されました。その中でもとくに有名な3点は「三役」と呼ばれています。それはどんな絵でしょう。どの富士山が思い浮かびますか? あの絵? あの富士?

東京・両国の「すみだ北斎美術館」で始まった「新収蔵品展-学芸員が選んだおすすめ50―」では、その「三役」を鑑賞することができます。「三役」をはじめ、「冨嶽三十六景」のすべてを収録した『THE北斎 冨嶽三十六景ARTBOX』の著者・すみだ北斎美術館の奥田敦子先生に詳しく教えていただきました。

三役ーその1 世界でもっとも有名な浮世絵?

「神奈川沖浪裏」  吉野石膏コレクション すみだ北斎美術館寄託 前期展示

「神奈川沖浪裏」 吉野石膏コレクション すみだ北斎美術館寄託 前期展示

海外でも「Great Wave」の名で親しまれる「神奈川沖浪裏」。北斎の代表作であり、世界でもっとも有名な浮世絵と言えるかもしれません。多くの芸術家に影響を与えていて、フランスの作曲家ドビュッシーは交響詩「海」を作曲し、その楽譜の表紙にこの絵のイメージを使っています。すみだ北斎美術館でも、日本の方にも海外からのお客さまにも人気の一枚です。
2024年に登場する新しい千円札の絵柄にも使われます。

『THE北斎 冨嶽三十六景ARTBOX』p.92-93

『THE北斎 冨嶽三十六景ARTBOX』p.94-95

「巨大な浪が水飛沫(みずしぶき)をあげながら力強く立ち上がり、その大自然の猛威に翻弄される人間、それに対して超然と静かにたたずむ富士山を表現した壮大な作品といえるでしょう」(奥田先生)

東海道・神奈川宿(現・横浜市神奈川区)沖、現在の東京湾上から富士山を望む図で、波間に見える船は、近郷近在の漁村から江戸へ鮮魚を運ぶ「押送船(おしおくりぶね)」と呼ばれる船だそうです。

三役ーその2 飽くなき「富士」への執念が⋯

「凱風快晴」 吉野石膏コレクション すみだ北斎美術館寄託

凱風快晴」  吉野石膏コレクション すみだ北斎美術館寄託 後期展示

「赤富士」として親しまれている作品。夜明け前、鰯雲がゆっくり流れる空の下、山頂はまだ薄暗がり。どこからながめた富士山なのか特定はできていません。

「夜が明けきってしまうまでのわずかな時間の経過を巧みに表現しており、北斎がこの自然のダイナミズムに対峙したときの感動と観察力、作品に昇華する力を感じさせる作品です」(奥田先生)

                                     

『THE北斎 冨嶽三十六景ARTBOX』p.88-89

『THE北斎 冨嶽三十六景ARTBOX』p.88-89

「冨嶽三十六景」シリーズの後に刊行した『富嶽百景』(全3冊)でも、鰯雲が浮かぶ「快晴の不二」(『THE北斎 冨嶽三十六景ARTBOX』p.89収載)を描いています。「凱風快晴」と同じテーマですが、また違った表現が魅力です。この3冊にも計102図の富士山に関する絵がおさめられ、北斎の富士山への執念、探求心が感じられます。

三役ーその3 雨のない「白雨」

「山下白雨」吉野石膏コレクション すみだ北斎美術館寄託

「山下白雨」 吉野石膏コレクション すみだ北斎美術館寄託 後期展示

「白雨」は「にわか雨」の意味ですが、山頂は晴れています。中腹から湧き上がる黒い雲と山裾の稲妻が、麓に降る「にわか雨」を想像させる絵です。

『THE北斎 冨嶽三十六景ARTBOX』p.98-99

『THE北斎 冨嶽三十六景ARTBOX』p.100-101

「山頂付近では晴れ渡っているのに、山裾では雷雨という対照的な天候をひとつの画面に描くことにより、富士山のなにものにも影響を受けない超然とした姿を表現しようとしたと考えられます」(奥田先生)

新収蔵品展  9月15日~11月8日まで

(三役と呼ばれる3点は)どこから描いたのかも判然としません。それは北斎が自然そのものに焦点をあて、自然の厳しさ、時の移ろいの中で刻々と変わる富士の表情を描き出すことに集中し、余分なものを削ぎ落とした結果といえます」(奥田先生)

「冨嶽三十六景」の中でも、特に強い印象を与える「神奈川沖浪裏」「凱風快晴」「山下白雨」。この秋、すみだ北斎美術館の「新収蔵品展―学芸員が選んだおすすめ50―」で、この三役3点を鑑賞することが出来ます。
(「新収蔵品展」で展示される作品と『THE北斎 冨嶽三十六景ARTBOX』で掲載している作品は図版が異なります)

現在の墨田区で生まれた葛飾北斎の作品を所蔵・展示するすみだ北斎美術館。「新収蔵品展」では、2016年の美術館開館以降に新たに収集した肉筆画、版画、版本の中から、学芸員が選んだ50点が紹介されます。展示作品の多くが初公開の作品なのも楽しみです。                        

新収蔵品展―学芸員が選んだおすすめ50―

会期|2020年9月15日(火)~11月8日(日)
   *前期9月15日(火)~10月11日(日)、後期10月13日(火)~11月8日(日)
会場|すみだ北斎美術館(墨田区亀沢2-7-2)
https://hokusai-museum.jp/
開館時間|午前9時30分~午後5時30分(入館は5時まで)
休館日|毎週月曜日 *ただし9月21日(月祝)は開館、23日(水)休館

*「神奈川沖浪裏」は前期、「凱風快晴」と「山下白雨」は後期に展示されます。
*美術館の公式ホームページで、最新の開館予定をご確認ください。

すみだ北斎美術館初の公式BOOKとして、『THE北斎 冨嶽三十六景ARTBOX』が発売になりました。すみだ北斎美術館所蔵の「三役」をはじめ、全46図を解説しています。

THE北斎 冨嶽三十六景ARTBOX

著者 すみだ北斎美術館(奥田敦子)

THE北斎 冨嶽三十六景ARTBOX

著者 すみだ北斎美術館(奥田敦子)

すみだ北斎美術館の至宝、「冨嶽三十六景」シリーズ46点を完全収録。初の公式BOOK。

海外で最も有名な日本絵画とも言われ「Great Wave」として人気の「神奈川沖浪裏」、「赤富士」として親しまれる「凱風快晴」⋯⋯。すみだ北斎美術館所蔵の「冨嶽三十六景」46図をすべてオールカラーで紹介する初の公式本。豊富な参考図版とていねいな解説、クローズアップで見る彫り、摺りの技。天才・北斎の、技(テクニック)と着想(イマジネーション)ここに極まれり!

profile

奥田 敦子

東京学芸大学大学院博士課程修了。太田記念美術館主任学芸員を経て、すみだ北斎美術館の開設に準備段階から関わる。現在、すみだ北斎美術館主任学芸員として、開館記念展ほか多数の展覧会を企画開催。国際浮世絵学会理事。著書『広重の団扇絵 知られざる浮世絵』(芸艸堂)のほか、葛飾北斎・妖怪・花火などに関する論文・解説多数。

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