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画布にのこされた輝く青春

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画布にのこされた輝く青春

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長野県上田市郊外の小さな里山の頂に建つ、戦没画学生慰霊美術館「無言館(むごんかん)」。遠くに浅間山や千曲川の流れを望む地に、太平洋戦争や日中戦争で亡くなった画学生たちの遺作を展示するためにつくられた、慰霊の美術館です。1997年に開館、志半ばに戦死した画学生の遺作、遺品を収蔵、展示しています。

生きたいと願った戦没画学生が遺した原風景

新型コロナウイルス感染症の流行によって「特別な夏」となった今年も、出征ギリギリまで無心に絵筆を握り続けた画学生の魂は、この美術館に存在し続けています。この夏、「NHK日曜美術館」でも大きく取り上げられた「無言館」。美術館の館主・窪島誠一郎さんの著書『無言館の青春』から、美術館の成り立ちや活動をご紹介します。

『無言館の青春』p.2-3

『無言館の青春』p.2-3

「あなたの絵具はちっとも乾いていない あなたが今もそこに生きていることを 私たちに教えてくれる」。「乾かぬ絵具」と題した『無言館の青春』の「序」には、色褪せぬ命への窪島さんの哀悼が綴られています。このページに添えられた絵具箱は、田中角次郎が美校時代に使っていたもの。田中は昭和15年4月中国江西省にて戦死、享年27歳。
無言館は、洋画家・野見山暁治さんと窪島さんが全国のご遺族宅を訪ねて、画学生がのこした絵をお預かりすることから始まりました。画学生のほとんどは野見山さんと同世代。生きて還った画家と、絵に込められた画学生の想いを次代に受け継ごうとする窪島さん。その強い意志が無言館に結集しています。

『無言館の青春』p.30-31

『無言館の青春』p.72-73

昭和18年8月ニューギニアにて26歳で戦死した伊澤洋の「家族」(p.30)は、館でも人気の作品。着物姿の両親、妹、背広姿で蓄音機から流れる音楽に耳をかたむける兄、カンバスにむかっているのは美校の制服を着た伊澤本人。実は貧しい農家であった家族の、幸福な食卓風景を空想して描いたもので、テーブルには果物や紅茶が並んでいます。伊澤は出征の際にこの絵を処分しようと考えていましたが、兄がそれに反対し、長く守ってきたものでした。せめて絵の中で家族団らんを味あわせてあげたいと願った画家。その絵を守り抜いた兄⋯。家族の強い絆が感じられる一枚です。

『無言館の青春 p.166-167』

『無言館の青春 p.166-167』

昭和20年ビルマにて戦死(消息不明)、享年24歳。昭和19年7月台湾の南方海上にて戦死、享年22歳⋯⋯。与えられた人生を絵を描くことにささげた画学生の青春が確かにここに存在します。

「美術館にならぶこれら画学生たちの絵の放つふしぎな力、ふしぎな光とはいったい何なのだろうかと考えてしまう。⋯そこには、戦争下の喧騒のなかで一枚の画布、一つの愛とむかいあっていた、水底のような静寂にみちた時間がながれている」(窪島誠一郎)

戦没画学生慰霊美術館「無言館」

〒386-1213
長野県上田市古安曽山王山3462
℡:0268-37-1650
JR北陸新幹線/しなの鉄道「上田駅」より上田電鉄別所線「塩田町」下車、徒歩30分(4月から11月はシャトルバスあり)
開館時間:9~17時
休館日:火曜日
入館料:一般1000円
https://mugonkan.jp/

「無言館」巡回展のお知らせ

各地で「無言館」の作品を鑑賞できる巡回展が開かれます。普段は収蔵庫にある作品のほか、常設展示の作品からも数点出品しています。「無言館」へよく足を運んでくださっている方も、遠方でなかなか信州へ行けない方も、お近くで作品に触れられる機会です。

「無言館展~戦没画学生からのメッセージ」

2020年7月18日(土)~9月6日(日)

三重県四日市市立博物館 https://www.city.yokkaichi.mie.jp/museum/museum.html

「無言館 遺された絵画からのメッセージ」

2020年9月12日(土)~11月29日(日)

神戸ゆかりの美術館 https://www.city.kobe.lg.jp/kanko/bunka/bunkashisetsu/yukarimuseum/index.html

「無言館展(仮)」

2021年4月10日(土)~6月6日(日)

新潟市美術館 http://www.ncam.jp/exhibition/

*日程は変更になる場合がありますので、詳しくは各美術館にお問い合わせください。

                                (構成/からだとこころ編集チーム)

無言館の青春

著者 窪島誠一郎

無言館の青春

著者 窪島誠一郎

戦没画学生慰霊美術館「無言館」の10年の歩みを綴った画文集。97人の作品と資料写真を多数収録。

<目次より>

*「青春美術館」へようこそ

*「無言館」の成人式

*「対話」——来館者ノートより

*未来へ

*「無言館の青春」

B6 206ページ

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