twitter
insta
facebook
Youtube

講談社くらしの本

「本物」の江戸絵画をじっくり堪能! 尾形光琳の心を動かすデザイン

twitter
facebook

「本物」の江戸絵画をじっくり堪能! 尾形光琳の心を動かすデザイン

twitter
facebook

美術館めぐりは、旅の大きな楽しみの一つですが、「伊藤若冲や歌川国芳の本物を見るにはどこに行けばいいの?」「あの展覧会で見た絵をもう一度見たいなぁ……」と思ったことはありませんか?
そんなときに便利なのが、作家名から所蔵館が探せる美術館ガイド『作家別 あの名画に会える美術館ガイド 江戸絵画篇』です。
江戸絵画の専門家である金子信久さんが、有名画家が描いたまさに「あの名画」というような作品から、知る人ぞ知る、けれども意外な魅力のある作品までを紹介しています。
その中から今回は春にオススメの絵画を紹介します。

平安時代の貴族の世界を夢見る「燕子花図屏風」

江戸時代の絵画にはロマンティックなものが多い。燕子花だけが描かれた屏風だが、絵を見る者はその向こうに、『伊勢物語』という遠い平安時代の貴族の世界を夢見るのである。在原業平(ありわらのなりひら)がモデルとされる「ある男」が、自分を都では不要の者だと思い込み、東国に入る。途中、三河の八橋(やつはし)で燕子花の美しい花を見て、都にいる愛する人を思って歌を詠むという、第9段の話である。

ロマンティックな思いに浸って眺めるだけでも充分だが、やはりデザインに惹かれる。心を動かすデザインには、色々な原理があるだろう。左右対称から生まれる重圧さ、空間を一杯に満たすデザインの賑々しさ。燕子花の並べ方も、現代ならば、理論化されたデザインの法則によって説明することができるに違いない。しかし原理というよりは、やはり光琳その人の感覚によって作られた、手探りの作業だったろう。
絵具もたっぷり塗られている。孔雀石(くじゃくいし)という鉱物から採る緑青と、藍銅鉱(らんどうこう)から採る群青(ぐんじょう)。ざらざらした表面と、ぼてっとした塗り方の厚みには、恐らく誰もが驚くだろう。また、図版で見る印象とは違って、意外に塗り方にムラガがあり、「雑だな……」とさえ思うかもしれない。

光琳より100年以上後の酒井抱一は、光琳の作品に倣った燕子花の図を描いているが、先にそれを見たことがあれば、なおさらそう感じるだろう。しかしこの絵肌こそ、光琳の魅力である。根津美術館にはもう一つ、光琳の《夏草図屏風》(なつくさずびょうぶ)もあるが、種々の草花がわんわんと生い茂るそのワイルド感は、絵具の大らかで力強い使い方から生まれている。

根津美術館では、燕子花の花が咲く頃にこの屏風が展示されることが多い。決まった時期に見ることができるのは嬉しい。以前の建物で見たときの、さらりと落ち着いた雰囲気も良かったが、2009年にできた隈研吾(くまけんご)設計の新しい展示室では、この屏風の現代に響く魅力が研ぎ澄まされて感じられる。

【上】槙楓図屏風(まきかえでずびょうぶ) 東京藝術大学大学美術館〈東京〉
木々の姿、そして抽象的な形。俵屋宗達の作と伝えられる屏風を模した作品である。どんなに先人の作品が素晴らしくても、世の中に一つだけ……ならば同じものをつくろう、というのが、江戸時代の美術のありようだ。

【下】中村内蔵助像(なかむらくらのすけぞう) 大和文華館〈奈良〉
京の銀商人として財をなした中村内蔵助は、光琳と親しい間柄だった。肖像画というとモデルが誰であり硬くなりがちだが、これは柔らかい。緩やかな形のとり方や魅力的な表情など、「見て楽しめる」肖像画。


絵画の背景にある物語やデザインにも注目しながら、ぜひ実物をご覧になってください。


根津美術館
〒107-0062 東京都港区南青山6丁目5-1
特別展『尾形光琳の燕子花図 寿ぎの江戸絵画』
会期 2019年4月13日(土)~5月12日(日)
http://www.nezu-muse.or.jp/jp/exhibition/next.html


東京藝術大学大学美術館

〒110-8714東京都台東区上野公園12-8
https://www.geidai.ac.jp/museum/

大和文華館
〒631-0034 奈良県奈良市学園南1-11-6
https://www.kintetsu-g-hd.co.jp/culture/yamato/


※紹介している作品は常設展示されていない場合がございます。お出かけになる前に、必ず、各館にお問い合わせください。

作家別 あの名画に会える美術館ガイド 江戸絵画篇

著者 金子 信久

作家別 あの名画に会える美術館ガイド 江戸絵画篇

著者 金子 信久

若冲、北斎だけじゃない!江戸絵画はこんなに楽しい、かわいい、笑える!超絶技巧からヘタウマまで、知らなきゃ損する愉快な世界へ!

profile

金子 信久(かねこ のぶひさ)

1962年、東京都生まれ。85年、慶應義塾大学文学部哲学科美学美術史学専攻卒業。福島県立博物館学芸員などを経て府中市美術館学芸員。専門は江戸時代絵画史。著書に『旅する江戸絵画 琳派から銅版画まで』(ピエ・ブックス、2010)『ねこと国芳』(パイ インターナショナル、2012)『日本美術全集14 若冲・応挙、みやこの奇想』(共著、小学館、2013)『別冊太陽 円山応挙 日本絵画の破壊と創造』(監修・共著、平凡社、2013)府中市美術館編『かわいい江戸絵画』(求龍堂、2013)『もっと知りたい長澤蘆雪』(東京美術、2014)『たのしい日本美術 江戸かわいい動物』(講談社、2015)『めでる国芳ブック ねこ』『めでる国芳ブック おどろかす』(ともに大福書林、2015)『日本おとぼけ絵画史 たのしい日本美術』(講談社、2016)『めでる国芳ブック どうぶつ』(大福書林、2017)府中市美術館編『歌川国芳 21世紀の絵画力』(講談社、2017)ほか。

fllow us fllow us

このカテゴリーで紹介されている本