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時代を超えるスター浮世絵師 歌川国芳の「本物」はどこで見れる?!

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時代を超えるスター浮世絵師 歌川国芳の「本物」はどこで見れる?!

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ユーモア溢れる浮世絵が印象的な歌川国芳(うたがわくによし)の作品は、書籍や展覧会で見たことがあるという方は多いのではないでしょうか。しかし、展覧会以外で本物の絵画を見るにはどこに行けばいいの? そんな疑問に答えてくれるのが、作家名から所蔵館が探せる美術館ガイド『作家別 あの名画に会える美術館ガイド 江戸絵画篇』です。
その中から今回は、時代を超えて今もなお注目される国芳作品の魅力を紹介します。

近年の国芳人気は凄まじい。展覧会や出版物の数もそれを物語っているが、非常に興味深いのは、特に若い人たちを中心に、古美術としてではなく、アニメーションやマンガと同じように、まるで現代の作品であるかのように楽しまれているという点だ。
そんな人気の中心にあるのが、冒頭に登場した《相馬の古内裏》。水木しげるがこの骸骨の図像を「がしゃどくろ」として使ったことから、この骸骨をそう呼ぶ人もいるほどだが、もちろん国芳が描いたのは「がしゃどくろ」ではない。
では何なのか。それが、実は重要な問題なのである。作品の題材は、山東京伝(さんとうきょうでん)の小説『善知安方忠義伝(うとうやすかたちゅうぎでん)』の中の、あるエピソード。朝廷に滅ぼされた平将門(たいらのまさかど)の恨みを、娘の滝夜叉姫(たきやしゃひめ)が晴らそうとする話である。相馬の古内裏というのは、かつての将門の政庁跡。そこに妖怪が現れると聞いて退治に乗り込んできた大宅太郎光国(おおやのたろうみつくに)(中央)を、滝夜叉姫(左)が操る妖怪が襲うところである。だが、原作にはこれと同じ場面はなく、巨大な骸骨も出てこない。ただし、普通の大きさの骸骨や空飛ぶ髑髏(どくろ)、また、亡くなった将門の髑髏が登場する。そうした物語全体の内容を咀嚼して、将門の怨念の象徴として巨大な骸骨を創作し、ひとつの光景として表したのだろう。

これを描くために人の骨格を観察した可能性も捨てきれないが、わざわざそうするよりも、医学の解剖図をヒントに描ほうが実際的だろう。生きているような動きの素晴らしさはさすが国芳だが、同時に、医学書をもとに几帳面に描いたという印象もある。国芳が50歳になろうかという頃の作だが、リアルな骸骨の描写を「自分のものにし過ぎない」初々しさも見逃せない。
浮世絵の場合、現存作品の多さは当時の人気の高さをも物語る。本書掲載のもののほか、山口県立萩美術館・浦上記念館や千葉県立関宿城博物館、坂東市立猿島資料館、名古屋市博物館などにも収蔵されている。

【右上】東都富士見三十六景(とうとふじみさんじゅうろっけい) 佃沖晴天の不二(つくだおきかいせいのふじ) 山口県立萩美術館・浦上記念館〈山口〉
数は少ないが、国芳は天保の頃、風景画を手がけた。現代にたとえれば、カメラを手に入れて、意気揚々と「面白い景色」探しに出かけ、様々なアングルを試みた……そんな作品ばかりである。

【右下】猫の当字 なまづ 山口県立萩美術館・浦上記念館〈山口〉
猫が集まって「なまづ」という字を作る。アイデアに関心して終わってはいけない。一匹一匹の姿態や仕草は、猫という生き物を知り尽くした作者ならでは。


【左】金魚づくし 玉や玉や 東京国立博物館〈東京〉
現存数が少ない「金魚づくし」シリーズ。当時はあまり売れなかったのか、との憶測も頭をよぎるが、今や大人気。「玉や玉や」と商うシャボン玉売りに子供たちが駆け寄る。一匹まざる蛙の子や背負われた亀の子の、何といたいけなこと。

4月7日(日)まで開催中の『奇想の系譜展』では、冒頭で紹介した「相馬の古内裏」のほか、「たこ」「うなぎ」「かつを」「なまづ」など猫が文字を作る、ねこのあて字シリーズの中の「ふぐ」も見ることができます。


東京都美術館
〒110-0007 東京都台東区上野公園8-36
https://www.tobikan.jp/
『奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド』
 会期 2019年2月9日(土) ─ 4月7日(日)
 https://kisou2019.jp/



名古屋市博物館
〒467-0806 愛知県名古屋市瑞穂区瑞穂通1-27-1
『特別展 挑む浮世絵 国芳から芳年へ』
 会期 2019年2月23日(土) ─ 4月7日(日)
 https://www.chunichi.co.jp/event/yoshiyoshi/

千葉市美術館
〒260-8733 千葉県千葉市中央区中央3-10-8
http://www.ccma-net.jp/

山口県立萩美術館・浦上記念館

〒758-0074 山口県萩市平安古町586-1
http://www.hum.pref.yamaguchi.lg.jp/

東京国立博物館
〒110-8712 東京都台東区上野公園13-9
https://www.tnm.jp/



『作家別 あの名画に会える美術館ガイド 江戸絵画篇』シリーズ
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※紹介している作品は常設展示されていない場合がございます。お出かけになる前に、必ず、各館にお問い合わせください。

作家別 あの名画に会える美術館ガイド 江戸絵画篇

著者 金子 信久

作家別 あの名画に会える美術館ガイド 江戸絵画篇

著者 金子 信久

若冲、北斎だけじゃない!! 江戸絵画はこんなに楽しい、かわいい、笑える!超絶技巧からヘタウマまで、知らなきゃ損する愉快な世界へ!

profile

金子信久(かねこ・のぶひさ)

1962年、東京都生まれ。85年、慶應義塾大学文学部哲学科美学美術史学専攻卒業。福島県立博物館学芸員などを経て府中市美術館学芸員。専門は江戸時代絵画史。著書に『旅する江戸絵画 琳派から銅版画まで』(ピエ・ブックス、2010)『ねこと国芳』(パイ インターナショナル、2012)『日本美術全集14 若冲・応挙、みやこの奇想』(共著、小学館、2013)『別冊太陽 円山応挙 日本絵画の破壊と創造』(監修・共著、平凡社、2013)府中市美術館編『かわいい江戸絵画』(求龍堂、2013)『もっと知りたい長澤蘆雪』(東京美術、2014)『たのしい日本美術 江戸かわいい動物』(講談社、2015)『めでる国芳ブック ねこ』『めでる国芳ブック おどろかす』(ともに大福書林、2015)『日本おとぼけ絵画史 たのしい日本美術』(講談社、2016)『めでる国芳ブック どうぶつ』(大福書林、2017)府中市美術館編『歌川国芳 21世紀の絵画力』(講談社、2017)ほか。

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